島次郎工房はやさしい作風のシーサーを創り出す。これから話題になる希少の作品群に期待あれ。


島次郎との出会い
読谷村楚辺の古い民家の二階に、自宅兼工房を持つシーサー作家・中野充都里さん。
彼女に辿り着くまでの道のりは、とても大変だった。彼女の作品は以前からよく目にしていた。地元作家にこだわっている、国際通りの民芸店で、一際可愛く、存在感を持つシーサー。直感というよりも一目惚れに近い。大抵の民芸店は、名のある作家さんでない限り、作者の名前は明記していない。作家の情報を聞きだそうとしても、同業者と警戒されて、最小限の事しか教えてもらえないのが普通だ。
なんとかショップ店員に「島次郎さん」とだけ聞き出すことができたので、あらゆる手段を使って工房をつきとめることに成功した。「島次郎」さんと聞き、当然のように髭を携えたごっつい島の男を想像していたが、作家さんは予想を大きく裏切り、笑顔が爽やかな女性だった。確かに、いごっそい男の手では、この繊細な愛嬌を醸し出すシーサーは、作り出せないだろう。

沖縄よりもさらに南を感じさせる、中野充都里さん作品は、本来魔除けの役割を持つシーサーが、「魔」までも癒してしまうのではないかと感じるほど、優しい表情をしている。「これでも頑張って怖い顔をしてるんですよ」と笑いながら語る充都里さん。島次郎工房の作品は、充都里さん一人が、スローライフの中でゆっくり創作されている。それだけに数に限りがある上に個性的なため、店頭に並んでも直ぐに入荷待ちとなる。そんな中でも、ライフスタイルを変えることなく、ゆっくり、じっくり仕事に取り組む姿勢が、作品ひとつひとつに息吹を感じる理由だろう。自分の中で納得が出来る作品を追い求めて、独学の部分と伝統の技術を融合させて試行錯誤を続けている。きっとゴールはないのだろう。シーサーという規制のない伝統工芸を追求するには、沖縄を深く知り、理解して、形にするしかないそうだ。
スローライフの中で創られた、妖精のようなシーサー。島次郎工房のシーサーは、手にふれたくなる温もりを感じさせる。

キジムナー
※左写真中央は、沖縄の精霊「キジムナー」
ガシュマルの樹の精霊で、赤い体にフサフサの赤毛のいたずらっ子。魚の目玉が大好物。ブナガヤーとも呼ばれている。沖縄ではシーサー同様、古くから語り継がれている精霊である。人なつっこくて「遊んでくれ」とせがんでくる。一度友達になると、毎回海の魚をどっさり土産に持ってくる。友達になるとオンブして海の上を走ったりしてくれる。ただ一つだけ注意しないといけないのが、オンブされている時に屁をすると、どんな深い海の上でも落とされる。屁にだけは気をつけろと古から語り継がれている。